テーマ別園内保育研究「地域子育て支援」

2017年度  ~みんなで子育て!笑顔の輪をひろげよう~

あおぞら第2保育園  植木、鈴木、長浜、大河原

 2000年、あおぞら第2保育園開園と同時に、国の少子化対策特例臨時交付金を活用して、念願の地域子育て支援センター「いちご畑」を開設しました。当初は自主財源で専任保育士を配置し、運営してきました。2005年10月には、横浜市より子育て支援センターに指定され、2014年より補助金が増額されました。2名の担当保育者を中心に、園庭開放、施設開放、育児講座、あそぼ!会、世代間交流など園全体で取り組んでいます。地域に根差し、豊かな子育てを実現できる地域をめざし子育て支援活動を実践してきました。

「かわいい♡ってたくさん褒められたよ」2歳児(ばら組)

  六角橋北町自治会七星会(シニアクラブ)の皆さんから「ケアプラザまで遠くて、山坂越えるのが大変だから保育園をかしてくれないか」と要請があり、月に一度いちご畑で定例会をしています。その際、在園児や地域の子どもたちと交流をしています。

 交流が始まって5年になりますが「明日はどこのクラスがきてくれるのかな?楽しみだな。」「いつでもいいよ、待ってるからね」と前日に園にきてお話をして下さる程、月に一度の交流をとても楽しみにしてくれています。

 7月、ばら組との交流日が近づいてきました。地域のおじいちゃん、おばあちゃんがきてくれることを伝えると、歌が大好きな子どもたちは「やったー!」「うたいたい」「ささのはさらさらー」と大きな声で歌い出しました。保育士が丸めた新聞紙とトイレットペーパーの芯を使ってマイクを作ると「♪かえるのうたが」と歌を歌ったり「Aのじぃじくる?」「Bのばぁばは?」と楽しみにしていました。

 当日、一人ひとりお気に入りのマイクを持っていちご畑に行きました。すると、たくさんのおじいちゃんとおばあちゃんを目の前にして、急に緊張して棒立ちの子どもたちです。

 まずは、保育士と一緒に「せーの―」で「こんにちはー」と挨拶をしました。「♪たなばた♪」を歌うと初めは、声が小さかったのですが、優しいまなざしで子どもたちを見守ってくださるので「♪うみ♪」「♪とんでったバナナ♪」等を歌っていくうちに、声も少しずつ大きくなって、いつものばら組になりました。たくさんの拍手をもらうとやる気満々な子どもたち。盆踊り大会で踊った「ジャブジャブ音頭」を披露すると、手拍子をしてくれて「かわいいーかわいい」「上手だね」とたくさん褒めてくださり、温かい笑顔と拍手をもらい子どもたちはさらに元気になり嬉しそうでした。最後は抱っこしてもらったり、握手やハイタッチをしたり、仲良しになりました。

◎神奈川区社会福祉協議会セミナーで事例発表を行いました

 標題のセミナーが11月28日に神奈川公会堂で行われました。あおぞら第2保育園の片岡主任保育士と六角橋北町自治会七星会の平本会長が事例発表を行いました。地域情報誌のタウンニュースでその模様が紹介されました。


「ハロウィンパレード」  1歳児(チューリップ組)

  毎年、10月下旬にハロウィンパレードを行っています。オバケ等に仮装した子どもたちが、いつもお世話になっている地域の方のお家や、商店街に行き交流できる貴重な時間です。

 チューリップ組は、自分たちで作ったかぼちゃのお面とマントを着けてオバケに変身すると、とっても嬉しそう。「これからオバケだぞーってやりに行こうね」と話すと、早速「オバケだぞー!」とやる気満々です。そしてバギーに乗って出発! 子どもたちは保育士と一緒に「おかしちょうだいな!」とやり取りをしたり「おばけなんてないさ」の歌を歌ったりしてパレードをしました。

 お家に到着して「Fさーん!」と皆で呼んでみると「はーい!」と笑顔でご夫婦で出てきてくれました。人見知りをしたKくんは、じっと見て後ずさり。もっと見たい!と積極的に前に出るDくんなど、子どもたちの反応も様々です。でも「かわいいオバケだね」と優しく話しかけてくれるFさんに安心したのか、僕も私も!と前に出て手を出しタッチをしてもらうと嬉しそうです。Fさんが子どもたちのために折り紙でカボチャオバケを作って玄関に飾ってくれていました。それを見つけたGくんは興味津々! 

〝触りたい″と手をグーッと前に出していました。そして皆が大好きなアンパンマンせんべいを頂き、とっても嬉しそうな子どもたち。「また一緒にお歌を歌おうね」と声を掛けてくれ、笑顔でバイバイをしました。

 次に二軒目のTさんのお宅へ。子どもたちはバギーから降り、お友だちと手をつないで玄関の前へ。もう楽しいことが待っていると分かったのか、グングンと前へ出ていきます。「Tさーん!」と皆で呼ぶと、すぐにご夫婦で出てきてくれました。「オバケだぞー」と子どもたちがオバケの真似をすると「こわいねー!」と驚いてくれるお二人。それが嬉しかったようで、子どもたちも声を低くしてみたり、手振りもしてみたりと、更にオバケになりきっていました。Tさんが「お菓子をあげようね」とお話してくれると〝ちょうだいな″と手を前に出して必死な表情のEくんや、お菓子の入っている袋の中に手を伸ばし〝はやくはやく!″と待ちきれない様子のKなど可愛い姿もたくさん。一人一人に手渡しでゼリーを頂くと、とっても大事そうに握っていました。そして「ありがとう」をして「バイバイ」のタッチをしてもらい、園に戻りました。

 園に戻ってからも、とっても楽しかったのかご機嫌な子どもたち。次の日の連絡帳には「ハロウィンしたよ」「かぼちゃ!オバケーとお話していました」「ご近所との交流もできて、皆で子どもたちを育てているんだなという感じが素敵です」という嬉しい感想も寄せられました。

 

 世代間交流は、触れ合う機会が少なくなってきている地域の方々にとっても、子どもたちにとっても、お互いにとても貴重になってきています。挨拶や会話をすることで、顔なじみになり、笑顔と元気の源になります。このような地域とのつながりを、これからも大切にしていきたいです。

「補完食の試食会」 給食室

 補完食(離乳食)について、量や大きさ、調理法などで悩まれている地域のママは多くいます。毎月のあそぼ!会で栄養士が食事や懇談時に様子を見に行っています。食に関しての質問が多く、ママから離乳食の講座を聞きたいなどの要望がありました。そこで、担当職員と相談し、0歳児の全会員が集まる9月の年齢別あそぼ!会の保育参加後に補完食(離乳食)の試食会を行いました。 

 当日は9組の参加。ゴックン期から幼児食までの各段階の一人分のサンプルをテーブルに並べると、ママたちはすぐに集まってきて、興味深げにサンプルを見ていました。各期のメニューの説明や口の発達について話しました。

 試食してみると、どんどん手が伸び「こんなにやわらかいんだ」「普通においしい」と感想が多く聞かれました。保育園ではモグモグ期までは素材の味を大切にしているため味をつけていないことを伝えると「野菜だけなのにすごく甘い」と驚きの感想がありました。また「いつから味付けをしているのか」や「食べる量が少なく心配」など多くの質問や悩みがあがりました。自分で食べる意欲を膨らませたり、目で見て手でつかんで口に運ぶという動作により口までの距離感や指先でつまむ力加減など機能面での発達をうながす手づかみ食べについて話すと、「手づかみ食べしやすいおすすめメニューはあるか?」の質問に他のママが「おにぎりも棒状にすると掴みやすくてうちの子は良く食べます」「なるほど!やってみようかな」とアドバイスしていました。

 ママからは「本では見るけど、実寸大のおおきさや味付けなどはわかりにくいので今回味わえてよかったです」とうれしい感想や「この段階の食事を通ってきたのだなと振り返れました」と子どもの食の面からの成長を感じる感想もありました。

今回のような試食会は、質問が多く、栄養士とママとの受け答えをみんなで共有でき、さらにママ同士の交流にもなりました。実際に目で見て、食べる体験が出来ることで、味付けの濃さややわらかさが分かり、見通しが持て、家でも作りやすくなるのだと感じました。これからも食に関する企画を開催してママたちの悩みに寄り添っていきたいです。

「つながり」 いちご畑

 Aちゃんは0歳児の弟がいる2歳の女の子です。ママは、いつも一緒に来ているBくん(3歳児)のママと過ごすことが多かったのですが、何回かいちご畑のおたのしみを楽しんでいくと保育士に少しずつ話をしてくれるようになりました。そして、いつも一緒だったBくんがいなくてもいちご畑に来てくれるようになったのです。

 

 9月のある雨の日、Aちゃん親子がやってきました。他の親子がいなかったので、子どもたちとおもちゃで遊びながらたくさん話をしました。すると、ママのほうからポツリポツリと家での様子を話しはじめました。その頃のAちゃんはちょうどイヤイヤ期で「お風呂入ろう」「いやあ~」「ごはん食べよう」「いやあ~」何をするのもイヤイヤ。Aちゃんが好きなことややりたいことを探し誘おうとしますが、その都度大泣きして嫌がります。

 

 まだ小さい弟もいてママは、いっぱいいっぱいになり思わず大声をあげて怒ってしまう、叩いてしまいそうになる。“叩いてはいけない”そう自分に言い聞かせ、その思いから壁を叩くようになっていました。すると、少し気持ちが落ち着いた。でも、その音にさらに激しく泣き出すAちゃん。その姿を見て、自分の気持ちを抑えようと今度は歯が欠けてしまうほど食いしばるようになってしまったそうです。思いを吐き出したことでママの表情も少し和らいだように見えました。

 一つひとつ話しを聞いていくことで、少しずつママとつながりができてきました。この頃から人に自分の気持ちを話せるようになったそうです。

 

 夏、保育園のプールに遊びに来た時のこと。たくさん遊んだ後、先に弟を連れて部屋に入ってきたママ。いつも弟が先、姉を後にしていて、今日もAちゃんは、おとなしくプールの外で立って待っていました。そこで、担当保育士が「連れてきちゃった!」とAちゃんを抱っこしてきました。そして、周りに助けを求めていいことや、先にAちゃんの甘えを受け止めるといいよ。と伝えるとハッとした表情のママ。その数日後、来館したママに聞いてみると、お風呂で先にAちゃんの体を拭いてみたらAちゃんが落ち着いたと話してくれました。また、そのことをお友だちにも教えてあげたそうです。その頃からいちご畑で他のママが困っているとアドバイスをしたり、助け合ったりする姿が見られるようになり、親子同士がつながっています。

 

 6月、Aちゃんが3歳の誕生日を迎えると、それまでの波があったイヤイヤが嘘のようになくなり穏やかに過ごせているとのことでした。そこでママは、Aちゃんと向き合い「今はAちゃんが先ね。」「弟が~だから弟が先ね。」と話し順番を決めるようになったそうです。

 その後、家で困っていることがあると「先生、聞いてもいい?」と声をかけてくれるようになり、保育者とのつながりが深まっています。

 最近は、いろいろな地域支援センターがあり、それぞれの施設で楽しいイベントがあり、その施設を巡る親子が増えていますが、なかなか人と人とのつながりが持ちにくくなっています。いちご畑ではこれからも安らげる場所、思いを気軽に話せる場所になるために、一人ひとりの要求をとらえた関わりを持ち、信頼関係を大切にして保育者と親子、親子同士がつながれるいちご畑にしていきたいです。

おわりに

  核家族化が進み、人との繋がりが薄れ、インターネットなどで手軽に情報が得られる現代。直接顔を合わせ、言葉を交わし、実体験を通して関係を作っていくことが大切だと実感しました。

 保育園は出会い・つながり・支え合える場です。地域の中にある保育園の役割は重要です。17年前、あおぞらが中心となり、神奈川区保育園子育て支援連絡会をつくりました。

 現在では公立、民間、他機関を含め、69施設が加入して保育の交流や、地域の子育て支援について協力しあい活動しています。これからも保育園の特性を生かしみんなで手を繋いで、安心して子育てが出来きる地域をめざし、笑顔の輪を広げていきたいです。