私たちは、文献を読み合わせ、各年齢の発達段階の特徴を学びながら描画を中心に実践を深めてきました。
あおぞら谷津保育園 豊田、高井、馬場、三堀
●「0歳児期後半は、運動面で大きな変化が見られます。つかまり立ちができて、体幹が定まり二足歩行が出来るようになると両手が自由になります。
●今年度0歳児クラスは11名入園。初めての園生活に朝の別れ際では全員泣いていました。まずは不安な気持ちを受け止め大人との信頼関係を土台に安心して過ごせるようにしていきました。抱っこやバギーに乗り散歩に出かけ、心地良さをたっぷり感じながら遊んでいく中で笑顔になっていきました。
●5月に入ると裸足になり、園庭で砂、葉、花などの自然に触れる遊びをたくさんしていきました。初めての感触に興味を示す子、驚いて泣いてしまう子など様々でした。
●Aちゃん(4月生まれ)は、座ったまま自分の手に届く範囲のもので遊んでいました。フィンガーペインティングをしたときのことです。初めは絵の具をジーっと見つめていました。保育士と一緒に、指先で触ると、初めての感触に目を見開くAちゃん。「ついたね!気持ちいいね!」と声をかけながら画用紙にチョンチョンと色をつけました。すると自分で手の平にも絵の具をつけたり、ついた手で画用紙を強く叩き、感触を楽しみ始めました。そして、もっとやりたいと手を伸ばしていました。7月には床に模造紙を広げて自由にクレヨンでの描画活動が出来るようにしました。
●「なんだろう」と、早速興味を持ち近づくBくん・Cちゃん(6月生まれ)。「なんだろうね。見ててね!」と保育士がなぐり書きをすると、「あ!あ!」と声を出し指差しするAちゃんとDちゃん(4月生まれ)。模造紙に描き始めました。紙に色がつくと保育士の顔を見てにっこり。「大きなたいこ」を歌うとクレヨンでトントンと模造紙をたたいて楽しんでいました。
●もっと子どもたちが楽しんで描けるよう、持ち手があり握りやすい水性マジックを使い、テーブルに模造紙を貼り、立った姿勢で肩を起点に腕を大きく動かせるようにしました。「なにか楽しいことが始まる!」と、Aちゃんも自分でハイハイをしてテーブルに一直線!「あ!ん!ん!」と手を差し出してちょうだいとアピール。渡すと左右に手を動かし、喜んで描いていました。Aちゃんも嬉しそうに自分が描いた線を見つめ、更に自分で色を変えて繰り返し楽しんでいました。子どもの姿から、一人ひとりに添った教材を見つめなおすことの大切さを学びました。
●今後も、描画活動を積極的に取り入れ描画と発達について学びながら、子どもたちの発達が豊かに育まれる活動をしていきたいです。
●自我が芽生え、直立二足歩行が確立し探求心が芽生える1歳児。クラスでは長い距離の散歩、衣服の着脱、スプーンを持って食べる、靴を履くなど自分でやってみたい気持ちでいっぱいの子どもたちです。
●4月に進級してすぐに、大きな模造紙に赤と青の絵の具を使い、手でぬたくりをして、みんなでおおきな「こいのぼり」を作りました。子どもたちは絵の具のボトルや筆を見るだけで「早くやりたい!」と目をキラキラと輝かせていました。いざ始まると紙いっぱいに両手をつかってぬたくりました。そんな中、いつもはやってみたい気持ちでいっぱいのEくんはぽつんと、端でともだちの姿を見ていました。「Eくんもやってみる?」と保育士が問うと泣きそうな表情で首を横に振りました。この日は全く絵の具に触れることはなくともだちの姿を見ているだけでした。
●5月にはクレヨン画をしてみました。すると、Eくんは声を発しながらそれは楽しそうにグルグルと紙いっぱいに描いていました。べたべたした感触の絵の具は苦手だったようです。Eくんはクレヨンを持つと「わー」と楽しそうに言葉を発しながらグルグル丸を描いていきます。FくんやGくんも「わー」と声を発し笑顔で描き、とても楽しそうに心を解放している姿でした。
●「描けたね」「楽しいね」などと共感していくことで、活動はさらに深まりました。そしてその後は毎月1回、描画活動を取り入れ実践していきました。
●Hくん(11月生まれ)やIくん(2月生まれ)はクレヨンの握りが弱かったり、線が細い表現でした。運動会の鉄棒の取り組みやお山登りなど、日常の保育を通じて力もつき、細かった線からしっかりした線へと変化が見られました。同時に1歳前半期の「弧状の往復線」から1歳後半期の「連続のグルグルまる」の表現も描画から見えてきました。
その後もクレヨンや朝顔の色水あそび、絵の具でのボデイペイント、プールでの水遊びなどの感触あそびを積み重ねました。4月は泣いていたEくんも笑顔で絵の具や水に親しみ、ダイナミックに全身を使ってあそぶ姿が見られました。
●一歳半ぐらいになるとマーカーなどでぐるぐるとなぐりがきが始まります。手を動かして描いた軌跡を目で確かめていろいろ試しながら探求していきます。
●やりたい要求を受け止め共感することで、楽しく描画活動を展開していけることを実感しました。日々の描画活動から、今ある姿をしっかり捉えて発達を見通した保育をしていきたいと改めて感じました。
●4歳児の描画は羅列的表現の時期と呼ばれています。画面にはまだ構図がなく、個々の形が画面を埋めるように羅列的に描かれ、顔から手足が出るように描く「頭足人」の時代から後期にはいろいろな商品が並べられているような「カタログ期」へと変化していく特徴があります。
●6月プール開きをした翌日、プールの絵を描きました。「ここでシャワーして、並んで、先生がお話しするの。プールに入ったら、端に座って水をかけるんだよね」と、どんどん話が膨らみます。この絵は、大きな四角の中に水色の顔をたくさん描きましたが、その上から水色で水を描き、見えなくなりました。話しながら描くことで楽しいことを思い出してともだちとの会話も弾んでいました。描いた絵の発表も1人ずつ前にでて行いました。自分の絵をみんなに見てもらいお話する中でJちゃん「私も同じ!」Kくん「ここに並ぶんだよね~」等、おしゃべり大好きな子どもたちは盛り上がっていました。みんなで経験したことをもう一度絵を通してともだちと共感することができました。
●5月に種まきをして育てたひとり一輪のひまわり。自分の名前を書いたプランターを毎日「Bちゃんの芽がでたよ!」「背が高いのはだれかな?」と水をあげながら観察して大きくなるのを楽しみにしていました。夏に満開の花を咲かせ、そのひまわりの前で、観察画に取り組みました。黒のクレヨンと、黄・緑・茶色の絵具で色塗り。いつもはおしゃべりでいっぱいの子どもたちも、もくもくと自分のひまわりと絵に向き合います。
●普段絵を描く時、描き始めるのに時間のかかるLくんがどんどん描き集中して絵具を塗ります。「ここは種だから」と茶色の上に緑色をのせて細かく表現していました。これまでの自由画や体験画では、イメージして描くことがなかなかできず「やりたくない」と言っていましたが、自分で育てたひまわりだからじっくり観察し表現できたのだと思います。そして「できたー!」と自信満々の表情。「みてー」と、ともだちと見せあいっこ!Lくんの好きな虫や植物の観察力を発揮しともだちと共感し合って楽しんでいました。
●その後、様々なことに意欲的になって、運動会でも興味がでるまで時間のかかった平均台や一本歯下駄に「やってみよう」と挑戦し「できた!」と自信につながっていきました。
●今回の実践を通して「描けない」「でも描きたい」「描いてみたい!」「描けた!」と子どもの自信につながるような保育をしていきたいと思います。保育の中で、描画活動と発達のかかわりについてさらに実践を深めていきたいと思います。
●5歳時期の子どもたちは、仲間関係が深まり、運動会、合宿等、日常の保育や行事などの経験を通し、描画の中でイメージをまとめ表現する力を豊かにしていきたいと実践してきました。
●Oくん(4月生まれ)は、毎日「今日、お散歩に行く?」「みんなでドロケイ(泥棒と警察ごっこ)しようよ!」と全身を使って遊ぶことが大好きです。しかし、描画活動(自由画)になると下を向き、なかなか画用紙に描くことができません。しばらくすると「かけない」「何をかいたらいいのか、わからない」と涙があふれてきます。保育士が「Oくんの好きなもの、描きたいものを何でも描いていいよ」と声をかけても、イメージがわかずにいました。
●ある日のこと「今日は、お散歩に行こう!」と声をかけると、大喜びの子どもたち。散歩先の公園では、滑り台、虫探し、のぼり棒、うんてい等、それぞれが好きな遊びで思いきり遊んでいます。Oくんは「うんてい」に挑戦し、初めて介助なしで一人で渡りきることが出来ました。出来たことを喜び、何度も繰り返し挑戦します。
●翌日、自由画の描画活動。いつものように画用紙を配ると、それぞれが思い思いに描き始めます。この日はOくんもうつむく事なくクレヨンで絵を描き始めました。「できた!」と見せに来た絵には、Oくんが「うんてい」をしている様子がのびのびと描かれていました。
●Pくん(1月生まれ)、Rくん(8月生まれ)も生き物の世話をしたり、捕まえたりすることは得意ですが、絵をイメージして描くことが苦手でした。
●ともだちの絵を見ながら真似をして描いたり、画用紙に小さく表現したりすることが多かったのですが、合宿の前に「こんなザリガニを釣ってみたい」とクレヨンと絵の具を使って「ザリガニ」を描く取り組みをしました。「Pくん、ザリガニ描けるよ!」「捕まえに行ったこともあるし、おうちでも飼ってるもん」と、四つ切の画用紙に大きくしっかりと、細かいところまで意識しながら描く姿がありました。
●また、合宿後の経験画。ラッションペンを使ってみると、描きたいもののイメージがある程度明確になっているようで、みんな一斉に黙々と描いていました。どの子も絵を見ただけで何を描いたのかがわかるほど楽しかったことが伝わってくるような絵でした。Rくんの画用紙には「流しそうめんが一番たのしかった」と、ともだちと楽しんでいる様子が描かれていました。
●Uちゃん(2月生まれ)も生活の中での出来事をイメージすることが苦手で、描画活動もなかなか手が進みませんでした。運動会に向けて、応援団の話し合い。「太鼓がいい!」と立候補し、話し合いの末、Uちゃんに決まりました。
●運動会当日、応援団の太鼓の役割を見事に終えたUちゃんは「やりきった!」という達成感に満ち溢れていました。運動会後の経験画には、一生懸命取り組んだ「応援団」が伸び伸びと描かれた一枚になりました。
●生活の中からイメージをつくり出し、生活の中で心が動いたことを絵で表現できる。日々の保育の中での遊びが充実し、満たされることが表現活動に結びついていくという事を改めて学びました。これからも、様々な素材を使った描画活動を取り入れ、楽しんでいきたいと思います。